その他〈本や図書館の基礎知識〉

Q.学校図書館と図書室の違いとは?

QUESTION

ずっと、"図書室"と呼んできましたが、呼び方を変えなくてもよいでしょうか?

■ ANSWER

図書を配架している部屋が1つで、ましてや規模も大きくないので学校図書館と呼ぶほどでもない。それゆえ"図書室"のままでよいと考えることが多いのではないでしょうか。図書室か図書館かは部屋の大きさや蔵書数の違いではありません。「読書」「学習」「情報収集」などの機能、職員、場所を含む名称が"学校図書館"です。
学校図書館と呼ぶことで、学びのための空間であることの理解を促すこともでき、学習を支える機能を持たせていく第一歩になると言えるかもしれません。学校によっては、"学習情報センター"、"情報メディアセンター"と呼ぶこともあります。大切なことは、単に図書を配架している部屋ではなく、学校図書館として資料の充実、機能の向上を心がけることではないでしょうか。

Q.「利用指導」とは?

QUESTION

利用指導とは図書の貸出・返却、開館時間など学校図書館のルールやマナーの指導ではないのですか?

■ ANSWER

"学校図書館の使い方"の指導と受け取られがちですが、本来は、"学校図書館の資料の使い方"の指導まで含めて、「利用指導」と言えるのです。子どもたちに学校図書館を活用する力が定着するよう、年間計画を立てて学年ごとに取り組む必要があります。
まずは年度初めに行うオリエンテーションに、ルールやマナーだけでなく、分類や配架、図書の探し方も加えましょう。参考資料としては『心をつかむオリエンテーション』『学校図書館学びかた指導のワークシート』(全国SLA)があります。全国SLA のWebサイトで「情報・メディアを活用する学び方の指導体系表」も閲覧できます。体系表については『情報を学習につなぐ』(全国SLA)で詳しく解説されていますので、参考にして利用指導を深めてください。

Q.「伝記」とは?

QUESTION

現在活躍中のスポーツ選手の本は、児童生徒に人気があるので購入しています。過去の人でなくても「伝記」として扱ってよいのでしょうか?

■ ANSWER

"何かを成した人"であれば、過去の人でも現代の人でも、伝記として扱います。小学校ではスポーツ選手を7類に分類せず、個人の伝記として289の書架に配架する学校も多いようですから、過去の人と現在活躍中の人気スポーツ選手が個人の伝記の書架に並ぶことになります。
また、スポーツ選手や音楽家などの伝記がシリーズで刊行されている場合があります。シリーズで一括して配架したくなる気持ちもわかりますが、伝記は一冊ずつ、被伝者の五十音順に配架します。分類が289(個人の伝記)でも7類でも同じです。学校図書館では、そうすることにより、被伝者が一か所にまとまり、探しやすくなります。

Q.「絵本」とは?

QUESTION

小学校の学校図書館で、絵本だけの空間を作っています。分類するときに絵本として扱うかを迷ってしまう場合があります。

■ ANSWER

判型は大きいが文字数が多いもの、文字数が少なくても内容が高度なもの、B6判でも文字の少ないもの、写真がメインのものなどが迷いの対象になるのでしょう。一つの目安として、本の裏表紙に記載されているCコード(日本図書コードの分類コード)の数字の最初の2ケタが87であれば、それは「子ども向きの絵本」であることを示しています。(『絵本と社会』・朝倉書店参照)
また全国SLAでは、絵本選定基準のなかで、「絵本とは、書籍の形態をもって、絵または絵と文の融合から生まれる芸術であると考える」とし「原則として、絵の比重が形式的にも、内容的にもその半分以上を占めていること。」としています。

Q.「昔話絵本」とは? その1

QUESTION

小学校で昔話の単元のときに、昔話絵本をまとめて置きたいのですが、どんな絵本を昔話と考えたらよいでしょうか?

■ ANSWER

いざ昔話を取り出すとなった場合、「民話」「伝説」「神話」などのほか、「グリム童話」「アンデルセン童話」は昔話なのだろうかと迷ってしまうことでしょう。
「昔話」のひとつの目安は、作者がいないことです。そして副書名にどこどこの民話と入っていたり、再話と書かれているのも昔話の目安といえます。「民話」「伝説」「神話」は、小学校では昔話としてまとめて考えてよいと思います。
「イソップ物語」「グリム童話」「アラビアンナイト」などは、伝承などを特定の人が集めて書いたものなので昔話と考えますが、「アンデルセン童話」はアンデルセンの創作ですので昔話ではありません。

Q.「昔話絵本」とは? その2

QUESTION

民話などをベースにしたと思われる絵本は、昔話絵本と考えてよいのでしょうか?

■ ANSWER

最近、昔話絵本をシリーズとして刊行する例がみられます。元の話があるにしても、作者が明記され創作性が強い場合は、創作絵本です。また、作者が絵本を創作するときに民話の雰囲気を出したいと考えることがあります。そうした作品は昔話とはしません。『花さき山』などは、これにあたります。反対に、『ももたろう』『いっすんぼうし』など、作者名が書かれているものもありますが、再話と考えられるものは昔話とします。
コーナーづくりで昔話の絵本を集める際、迷うことも多いでしょう。「よい絵本」(全国SLA)や『読み聞かせABC 改訂版』(東京都子供読書活動推進資料)などのブックガイドで昔話の項目に挙げられている本をみるのも参考になると思います。

Q.奥付から読み取れること

QUESTION

意識的に奥付を見ると、何がわかるのでしょうか?

■ ANSWER

書誌的事項の確定をするのに奥付を見ますが、確定の優先順位は、表題紙→奥付→背表紙→表紙の順で、奥付は優先順位が高く重要です。最近は表紙カバーのデザインをそのまま表題紙に用いる図書も増えていますので、そのような場合は表題紙ではなく、奥付の情報で書誌的事項を確定した方がよいでしょう。
もともと日本では表題紙よりも奥付に出版情報を記載する習慣がありますので、図書館担当者は奥付をしっかりと見るようにしてください。特に、学習用の図書の場合は責任表示(著者、作者、編者、訳者など)があるということが選書をする上での判断材料にもなりますので注意すべき点です。監修者は直接本文に対して責任は負いません。
また、ロングセラー図書の奥付からは、発行年、改訂年月日、刷り数などで、今までの発行経過を知ることができます。

Q.学校図書館に名前を付けてもいいのですか?

QUESTION

親しみやすい名前を付けたいと保護者ボランティアから提案がありました。

■ ANSWER

学校図書館に親しみやすい名前をつけることは、子どもたちに利用される空間にするためのひとつの方法と考えられます。しかし一部の保護者で決めてしまっていいかというと、そこは慎重に考えましょう。新しく名前を付けて学校を挙げて図書館のアピールをすることで利用促進につなげる、あるいは、子どもたちと一緒に名前を考えるイベントを企画するなど、あくまでも学校主導で教育として行うことが望ましいと思います。
さらには、今までの習慣でどうしても図書室と呼んでしまっていた先生も子どもたちも、自然と"○○図書館"と呼ぶようになれば、学校図書館という意識付けの効果も期待できます。折しも春休み目前。新年度に向けて新たな学校図書館の準備に思いを巡らせてみてください。