学校図書館施設基準

1990年8月1日
1999年2月25日改訂
全国学校図書館協議会制定

学校図書館は、児童生徒および教職員が必要とする資料・情報を計画的に収集、整理し、これを提供するとともに、児童生徒に対し図書館や資料・情報の効果的な利用についての指導や助言を行い、また、教職員の教育活動にサービスと援助を行う任務をもっている。今日、学校図書館が収集し、提供しようとしている資料・情報は、社会や科学技術の進展に伴って多様化しており、これまでのように活字を中心とした資料だけでなく、映像や音声を収録した資料、さらにコンピュータを利用する資料・情報にまで及んでいる。したがって、学校図書館施設を考えるにあたっては、社会や科学技術の進展に積極的に対応しながら、学校図書館の活動を円滑に実施できるよう考慮して基本計画を作成する必要がある。学校図書館において展開される活動を、サービスを提供する側であるスタッフの活動、およびサービスを受ける側である児童生徒・教職員の活動の二つの側面から考えると、およそ次のようにとらえることができる。まず、学校図書館スタッフの活動としては、図書館の運営計画をはじめ予算、調査、統計、諸記録、施設設備の維持管理などの経営的活動、資料・情報の選択、収集、整理、点検、更新、検索トゥールの作成などの技術的活動、館内利用、館外利用、レファレンス、広報活動などのサービス活動、全校的な図書館の利用計画、利用指導、読書指導、児童生徒図書委員会の指導などの教育指導的活動があげられる。次に、児童生徒の活動としては、個別に、あるいは学級やグループ単位で学習や読書・視聴活動、コンピュータを利用しての学習活動あるいは自由な雰囲気での読書、教科や教科外活動に関連した各種の制作活動、文化活動、自主的な活動としての委員会活動などがあげられる。また、教職員の活動としては、教材等の調査や研究、あるいは制作活動があげられる。このような諸活動を円滑に実施するためには、施設上どんな観点・配慮が必要とされるかについて示したのがこの基準である。基準は、「学校図書館施設の基本原則」、「スペースごとの最低必要面積」、「建築および設備の条件」の三部より構成されるが、この基準は、全国どの地域、どの学校においても、学校図書館の活動を達成するためには最低これだけの施設が必要であるという必要最低条件を示したものである。なお、盲学校、聾学校、養護学校、および小学校と中学校の共用図書館、中学校と高等学校の共用図書館、全日制と定時制の共用図書館、また、地域開放を行う図書館などについても、原則としてこの基準を通用する。しかし、これらは、その図書館の特性を考慮して、機械的にこの基準を適用するのではなく、弾力的に対応することが望ましい。

1.学校図書館施設の基本原則

1.1 学校図書館は、専用の施設として設ける。
1.2 学校図書館の位置は、児童生徒の移動の実際を考慮し、校内の利用しやすい場所に設ける。
1.3 学校図書館施設は、次のような活動が展開できるスペースを設ける。
1.3.1 利用者が落ち着いて学習したり、読書したり、グループで学習したり、AV機器を利用して視聴することができるスペース。(学習・読書・視聴スペース)
1.3.2 リラックスした雰囲気で自由に雑誌や新聞、軽い読み物などを読むことができるスペース。(ブラウジング・スペース)
1.3.3 コンピュータ・ソフトやインターネットを使って検索したり、学習ソフトを利用するためのスペース。(コンピュータ利用スペース)
1.3.4 図書、逐次刊行物、ファイル資料、AV資料、コンピュータ資料などの図書館資料を配架するためのスペース。(配架スペース)
1.3.5 利用者に資料を貸し出したり、利用者が返却したり、利用相談などを行ったりするためのスペース。(受付スペース)
1.3.6 図書館スタッフが快適に仕事や生活ができるスペース。(スタッフ・スペース)
1.3.7 図書館内に配架された以外の資料で、貴重な資料や保存が必要な古い資料などを収納するスペース。(保存・収納スペース)
1.3.8 図書館に所蔵された各種資料を、カ-ド目録やコンピュータを利用して検索するためのスペース。(検索スペース)
1.3.9 ポスター類、文集、発表資料、模型、テーマ図書などを掲示したり、展示したりするためのスペース。(展示スペース)
1.3.10 児童生徒図書委員会が日常的に活発な活動を展開するためのスペース。(図書委員会スペース)
1.3.11 教職員が授業のために図書館で研究したり、図書館資料を使って教材研究したりするスペース。(教職員の研究スペース)
1.3.12 児童生徒および教職員が図書館資料を利用して、授業などで使う発表物や教材を制作するためのスペース。(制作スペース)
1.3.13 各スペースを利用するために往来する通路スペース。(交通部分)
1.4 学校図書館の面積は、小学校6学級、中学校3学級、高等学校3学級の規模の学校で、同時に2学級が利用できる広さとする。また、小学校13学級以上の場合は2.5学級が同時に、中学校19学級以上の場合は3.5学級、高等学校22学級以上の場合は3.5学級が同時に利用できる広さとする。

2.スペースごとの最低必要面積

学校図書館の各スペースごとの最低必要面積は表Ⅰ、表Ⅱ、表Ⅲのとおりとする。ただし、表中の(1)から(7)のスペースは、学校規模の大小にかかわらず設けなければならないが、(8)から(12)のスペースは、一定規模以下の学校においては、他のスペースと共用してもよい。
それぞれのスペースは画一的に壁で仕切ることは避けて、将来の改造の余地を残して弾力的に計画する。
各スペースは、図書館としては1か所に集中して設置されることが望ましい。1か所への集中が不可能な場合でも、利用上の関連を考慮し、各スペースが有機的に利用できるよう配置する。

3.建築および設備の条件

学校図書館の建築および設備についての条件はつぎのとおりである。
3.1 建築および構造
3.1.1 空間構成とフレキシビリティ
各スペースは、それぞれ必要な機能を満たすとともに児童生徒に親しまれる空間とする。間仕切り・設備等は、現在、将来ともに配置が変化できる計画とする。
3.1.2 床および壁面
床の構造は、図書館資料の増加および利用の変化に対応できるよう床荷重を算入しておく。書架、ファイリング・キャビネット、AV機器等の設置・移動を考慮して、最低300㎏/㎡の床荷重を見込んだ構造とする。なお、図書館内は資料や機器の移動にブックトラック等が使われるので通路に段差を設けてはならない。
壁面は、掲示物の利用スペースとして確保する。
3.1.3 色彩と仕上げ
図書館内は、全体的に明るい色調、低い彩度を使用する。また、仕上げは、柔らか味のあるものとする。
3.2 設備
3.2.1 吸音と遮音
図書館は、外部からの騒音を防ぎ、内部での騒音の発生を少なくするため、床はカーペット敷き等とし、天井は吸音性の高い材料とする。さらに、BGM装置を導入し、マスキング効果等で音環境の良化をはかる。
3.2.2 換気・暖房・空調
図書館は、常に適当な温湿度を保ち快適に利用できるよう、機械換気設備や空調設備を設ける。なお、個別に温湿度が調節できる設備が望ましい。
3.2.3 照明
図書館では、学習や読書、視聴、その他の活動に必要な明るさを確保する。人工照明による机上照度は300ルクス以上とする。光源は昼光色を採用する。照明器具は均等に分布して机や書架の配置を自由に変えられるようにする。天井の低い場合はまぶしさを避け、机上面に利用者自身の影ができないようにする。なお、窓面による自然採光の活用、局部的な補助採光等を十分考慮する。
3.2.4 搬送
図書館が二層以上になる場合は、リフトもしくはエレベーターを設ける。
3.2.5 放送・通信
図書館は、館内放送設備および校内・校外に連絡できる電話設備を設ける。
3.2.6 電源・コンセント
図書館は、コンピュータ、AV機器、補助採光のためのコンセントを十分に設け、将来の模様替えにも対応できるよう考慮する。コンピュータ、移動書架、コピー機器等には、専用電源を設け、図書館全体としては十分な電力容量を見込む。
3.2.7 給排水
図書館は、手洗い設備を設ける。また、スタッフ・スペースには、流しおよび湯沸かし等の設備を設ける。

表1小学校の規模別各スペースの最低面積

単位=(m2
(1)=学習読書視聴 (2)=ブラウジング (3)=コンピュータ (4)=配架 (5)=受付 (6)=スタッフ (7)=保存収納 (8)=検索 (9)=展示 (10)=委員会 (11)=教員研究 (12)=制作 (13)=ネット面積 (14)=交通部分

  スペース  
学級数 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14) 合計
5以下
6
7~12
13~18
19~24
25以上
70
90
110
155
185
210
15
15
20
25
30
35
20
25
30
40
50
55
35
35
60
80
100
120
20
20
25
30
30
35
20
20
25
25
30
35
15
15
20
25
25
30
-
-
-
-
10
10
-
-
-
10
10
15
-
-
15
15
15
20
-
-
-
-
15
15
-
-
-
15
15
15
195
220
305
420
515
595
85
95
130
180
220
255
280
315
435
600
735
850

表2中学校の規模別各スペースの最低面積

  スペース  
学級数 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14) 合計
5以下
6
7~9
10~12
13~15
16~18
19~21
22以上
80
115
130
145
160
175
200
215
15
20
20
20
30
30
35
35
20
30
35
40
45
50
55
60
40
45
50
80
80
80
100
110
20
25
30
30
30
30
35
35
20
20
25
25
25
25
30
35
15
15
20
20
25
25
25
30
-
-
-
-
-
10
10
15
-
-
-
-
-
10
10
15
-
-
-
15
15
15
15
20
-
-
-
-
-
15
15
15
-
-
-
-
15
15
15
15
210
270
310
375
425
480
545
600
90
115
135
160
180
205
235
255
300
385
445
535
605
685
780
855

表3高等学校の規模別各スペースの最低面積

単位=(m2

  スペース  
学級数 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14) 合計
5以下
6
7~12
13~15
16~18
19~21
22~24
25~27
28~30
110
130
150
160
175
190
225
240
255
15
15
20
30
30
35
35
40
40
20
35
40
45
50
55
60
65
70
55
65
80
85
95
100
110
120
125
20
25
30
30
30
35
35
35
40
25
25
30
30
30
30
30
35
35
20
20
25
30
30
35
35
35
40
-
-
-
10
10
10
15
15
15
-
-
-
-
-
-
20
20
20
-
-
-
20
20
25
25
25
30
-
-
-
-
-
15
15
15
20
-
-
-
-
20
20
20
20
20
265
315
375
440
490
550
625
665
710
115
135
160
190
210
235
270
285
305
380
450
535
630
700
785
895
950
1015