全国学校図書館協議会図書選定基準
全国学校図書館協議会 1980年 9月15日 制定
1988年10月 1日 改定
2008年 4月 1日 改定
本会の実施する図書選定の基準を次のとおりに定める。
本会は1951年以降、各学校図書館が本来の目的を達成するための蔵書構成を行ううえで必要かつ適切な資料を提供するべく図書選定を実施してきた。この基準は、従来の図書選定基準を長年にわたる選定実務の経験を加味し、検討および整理をほどこし改定したものである。
Ⅰ 一般基準
- 1 内容
- 学校における教育課程の展開に寄与し、児童生徒の学習活動や健全な教養・レクリエーションに役立つものであるか。
- 1) 知識を得るための図書
- (1) 正しい知識や研究成果が述べられているか。
(2) 新しい知見や方法が紹介されているか。
(3) 主題の取り扱い方は、新鮮で創意や工夫がみられるか。
(4) 一貫した論理で体系づけられ、論旨が明確であるか。
(5) 事実の叙述は、科学的に正確で、かつ具体的であるか。
(6) 取り扱っている範囲は、児童生徒が学習や研究をするのに適切であるか。
(7) 資料は、その主題を解明するのに適切なものであるか。
(8) 異見・異説などのある場合は、必要に応じてこれを紹介し、その原拠が示されているか。
(9) 引用文・さし絵・写真・図表などは、正確かつ適切で、必要に応じて原典が示されているか。
(10) 統計は、正確で、調査時期および原拠が示されているか。
- 2) 教養のための図書
- (1) 児童生徒のたしかな批判力や豊かな情操を育てるものであるか。
(2) 生きる希望にあふれ、深い感動を与えるものであるか。
(3) 読書の楽しさを味わえるものであるか。
(4) 内容や主題に独創性があるか。
(5) 内容の取り扱いが、時流にのった興味本位のものになっていないか。
(6) 正義と真実を愛する精神に支えられているか。
(7) 人権尊重の精神が貫かれているか。
- 3) 教師向けの図書
- (1) 教職員の教育活動に資するものであるか。
- 2 表 現
- (1) 児童生徒の発達段階に即しているか。
(2) 差別的な表現がされていないか。
(3) 小・中学生を対象とする場合は、常用漢字・現代かなづかいを用いているか。
(4) 文章は、わかりやすく、文法にかなっているか。
(5) さし絵・写真・図表などは、本文を理解するのに役立ち、適切なものであるか。 - 3 構成
- (1) 書名は、内容をよく表しているか。
(2) 目次・見出しの表現や位置は、内容に適応したものであるか。
(3) 必要な索引が完備され、引きやすいか。
(4) 奥付には、必要な事項が記載されているか。
(5) 必要な参考文献が掲げられているか。
(6) 著者について必要な紹介がされているか。 - 4 造本・印刷
- (1) 製本・外観・大きさが適切であり、書誌的な体裁が整っているか。
(2) 装ていや表紙のデザインは、美術的で好ましい印象を与えるか。
(3) 製本は堅ろうで開きがよく、学校図書館における使用に耐えるものであるか。
(4) 乱丁・落丁などの事故はないか。
(5) ページ数は、扱っている内容にふさわしいか。
(6) 活字の字体や大きさは、児童生徒の発達段階に即して適切であるか。
(7) 版の組み方は、行間・字詰めに余裕があり読みやすいか。
(8) 誤植はないか。ある場合は正誤表がついているか。
(9) 印刷は鮮明で見やすいか。
(10) さし絵・写真・地図などは鮮明で調和がとれ、大きさも適切であるか。
(11) 用紙は良質で丈夫であるか。
Ⅱ 部門別基準
- 1 百科事典・専門事典
- (1) 項目の選定や解説が適切になされているか。
(2) それぞれの項目について、専門家が執筆し、説明の内容は正しく、かつ新しいか。また、執筆者が示されているか。
(3) 見出しが使いやすく、必要な写真・図版が適切に掲げられているか。
(4) 参照の指示が適切になされているか。
(5) 参考となる資料が紹介されているか。
(6) 索引は、調査研究に充分たえるように作られているか。
(7) 統計資料・補遺・年鑑の刊行など、新しい情報を補充するための配慮がなされているか。
(8) 必要に応じて、充分な改訂がなされているか。 - 2 辞典
- (1) 編者は、信頼のおける専門の研究者であり、最新の研究成果を踏まえた編集がなされているか。
(2) 見出し語の選定は適切であるか。
(3) 解説・説明は正確でわかりやすく、客観的になされているか。
(4) 索引や参考となる資料が、必要かつ充分につけられているか。
(5) 必要に応じて、出典・用例・参照などが適切につけられているか。 - 3 年鑑・統計・白書類
- (1) 公的な機関または責任ある団体によって編集されたものか。
(2) 資料の収集や処理が客観的かつ科学的であるか。
(3) 統計は正確で新しく、調査年度および原拠が示してあるか。
(4) グラフや図版が適切に使われ、また、必要な解説がつけられているか。
(5) 年鑑は、とくに項目の選定や解説が適切になされているか。 - 4 叢書・全集
- (1) 編集方針が、全体の構成にいかされているか。
(2) 各巻の内容は、相互に均衡がとれているか。
(3) 全集類については、その標題と内容が一致しているか。
(4) 全巻をとおした必要な索引がつけられているか。
(5) 本文の異同につき明示し、さらに校訂が行き届いているか。
(6) 商業主義的見地に立った編集上の不自然さがないか。
(注)必要な場合は、叢書・全集の中の一冊でも対象とする。 - 5 翻訳書
- (1) 完訳であるか。
(2) 完訳となっていないものについては、翻訳上の態度が明確であるか。
(3) 原意をよく伝えるとともに、よくこなれた文章になっているか。
(4) 適切な注釈が付けられているか。
(5) 原典についての説明がなされているか。
(6) 翻案書については、原作の意を損なわずに書きかえられているか。
(注)日本古典の現代語訳についても上記に準ずる。 - 6 実用書・技術書
- (1) 児童生徒の生活にふさわしく有用なものであるか。
(2) 内容が新しく正確であり、最新の技術・学問を反映したものであるか。 - 7 自然科学に関する図鑑
- (1) 写真や図版は、実物の色彩や形態を正確に伝えているか。
(2) 写真や図版は、実物の特徴を正しく表現しているか。
(3) 写真や図版には倍率が示してあるか。
(4) 児童生徒の発達段階に応じた適切な解説や索引があるか。 - 8 地図帳
- (1) その地図の目的にかなった図法を用い、また、図法名を示してあるか。
(2) 信頼のおける新しい原図をもとにしているか。
(3) 位置や地形の表示は正確であり、工夫がみられるか。
(4) 縮尺と、必要に応じて方位が、明示されているか。
(5) 地図番号などの約束が明示されているか。
(6) 色彩は鮮明で、統計地図などの段階差が明確に出るように配色上の工夫をしてあるか。
(7) 国名や地名、統計上の数値などは最新のものか。
(8) 児童生徒の発達段階に応じた適切な解説や索引があるか。
(9) 必要に応じて、地名を読みやすくする配慮がなされているか。 - 9 絵本
- (1) 子どもに対する愛情に貫かれ、絵と文が芸術的に調和しているか。
(2) 絵は、内容を的確に表現したもので、子どもの感覚に合った楽しいものになっているか。
(3) 文章は、子どもに理解できる内容や表現になっているか。
(4) 用紙・装てい・判型などは、内容にふさわしく作品を充分に生かしているか。
(注)中学・高校生向きの絵本についても上記に準ずる。 - 10 趣味・レクリエーションの図書
- (1) 児童生徒の趣味・能力に合致しているか。
(2) 内容は正確であるか。
(3) 児童生徒の健全な活動を促進するものであるか。 - 11 学習参考書
- (1) 児童生徒の学習活動に役立ち、その内容が教育課程に合っているか。
(2) 内容が精選されているか。
(3) 系統的で児童生徒に理解しやすいか。 - 12 伝説・民話
- (1) 採集資料について、採集年代・採集地・採集者・語り手あるいは出典など、必要な事項が記されているか。
- 13 神話
- (1) 古代における人びとの考え方や生活を理解できるものであるか。
(2) 必要に応じて、原典または原拠が示されているか。
(3) 必要に応じて、注解がつけられているか。 - 14 地域に関する図書
- (1) 地域の特質や現状が正確に記述されているか。
(2) 他の地域にも通じる普遍性を有するものであるか。
(3) 趣味的なものになっていないか。
(4) 取り扱っている内容が独断的で恣意的なものになっていないか。
(5) 取り扱っている内容について、その原拠を示すなど、調査・研究する場合に役立つものであるか。
(6) 参考文献などが紹介されているか。 - 15 教師向けの教育図書
- (1) 内容は教育学の研究と教育活動の成果をもとに書かれているか。
(2) 取り扱っている事柄の解釈が、個人的で恣意的なものになっていないか。
(3) 教育実践に有効適切な理論、新鮮な問題提起、参考になる事例などを含んだ内容であるか。 - 16 教師向けの学術研究書
- (1) 教育課程の編成に役立つものであるか。
(2) 学習指導に関連する専門的な研究を内容としたものであるか。
(3) 主題と内容が高度であり、また、特殊すぎないか。 - 17 宗教に関する図書
- (1) 宗教の意義、現状、そのあり方を客観的に理解できる内容であるか。
(2) 特定宗教の経典、教義、歴史、社寺などの解説は、正確なものであり、児童生徒の学習および教養に役立つものであるか。 - 18 政党に関する図書
- (1) 政党の現状、歴史を客観的に理解できる内容であるか。
(2) 特定政党の綱領、政策およびその解説は、正確なものであり、児童生徒の学習・教養に役立つものであるか。
(注)政治結社に関する図書についてもこれに準ずる。 - 19 性に関する図書
- (1) 主題や内容が、科学的に正確であり、児童生徒の発達段階に即しているか。
(2) 倫理的に高い観点を有しているか。
(3) 興味本位の内容になっていないか。 - 20 まんが
- (1) 絵の表現は優れているか。
(2) 俗悪な言葉を故意に使っていないか。
(3) 人間の尊厳性が守られているか。
(4) ストーリーの展開に無理がないか。
(5) 俗悪な表現で読者の心情に刺激を与えようとしていないか。
(6) 悪や不正が讃えられるような内容になっていないか。
(7) 戦争や暴力が、賛美されるような作品になっていないか。
(8) 学問的な真理や歴史上の事実が故意に歪められたり、無視されたりしていないか。
(9) 実在の人物については、公平な視野に立ち、事実に基づき正確に扱われているか。
(10) 読者対象にふさわしい作品となっているか。
(11) 原著のあるものは、原作の意が損なわれていないか。
(12) 造本や用紙が多数の読者の利用に耐えられるようになっているか。
(13) 完結されていないストーリーまんがは、原則として完結後、全巻を通して評価するものとする。 - 21 写真集
- (1) 主題は、児童生徒の成長に役立つものであるか。
(2) 表現技術に新鮮さがあり、編集・印刷がすぐれているか。
(3) 必要に応じて、撮影上のデータ・解説などが適切につけられているか。 - 22 伝記
- (1) 著者の被伝者に対する態度は真摯で、資料をよく調べ、正確な記述となっているか。
(2) 被伝者は、多面から描かれ魅力ある人物像となっているか。
(3) 被伝者の業績や人格が、時代背景とのかかわりの中で描かれているか。
(4) 文章は、人物像をいきいきと描き出しているか。
(5) 児童生徒に生きる指針を与えるものであるか。 - 23 手記
- (1) 著者の執筆態度が真摯であり、その内容が真実追求の記録となっているか。
Ⅲ 対象としない図書
- (1) 特定地域でしか入手できないもの、直接販売方式でしか入手できないもの、個人出版物等一般に入手が困難なもの。
(2) 限定版、および豪華特装版であるもの。
(3) 教科書、副読本、問題集、特定教科書の解説書および自習書。
(4) 特定宗教の立場よりする布教宣伝および一方的批判を内容としたもの。
(5) 特定政党の立場よりする宣伝および一方的批判を内容としたもの。政治結社についてもこれに準ずる。
(6) 書きこみや切り抜きなど個人で使用することを目的とするもの。
(7) 破損しやすい、しかけ絵本。
(8) 文庫本およびこれに準ずる大きさのもの。
(9) 一般書籍として流通せず、雑誌としてのみ流通しているもの。
(10) 年次刊行物を除く定期刊行物。
(11) 原則として出版されてから半年以上経過したもの。