塙保己一翁・夢プロジェクト 報告

塙保己一翁・夢プロジェクト

(社)全国学校図書館協議会震災対応委員会
委員長 対崎 奈美子

2011年7月9日(土)、埼玉県本庄市・本庄総合公園体育館(シルクドーム)にて、東日本大震災で被災した岩手県・宮城県・福島県内の学校132校に約4万冊の図書を寄贈する「塙保己一翁・夢プロジェクト」を実施することができました。これは、「第59回関東地区大会 こだま大会」(主催:公益社団法人日本青年会議所関東地区協議会 主管:社団法人こだま青年会議所)のイベントとして行われたもので、被災地の子どもたちに図書を送りたいというこだま青年会議所(以下、こだまJC)の思いに全国学校図書館協議会(以下、全国SLA)が賛同し、二団体の共催事業として行われたものです。

全国SLAでは5月中旬から岩手県・宮城県・福島県の各県SLAを通じて、各学校に学校図書館施設・蔵書の被害状況、図書の寄贈を希望するか等の調査を行ってきましたが、同プロジェクトではこの調査で図書の寄贈を希望すると回答した小・中・高等学校計132校(小学校102校、中学校20校、小・中学校2校、高等学校8校)へ図書を寄贈いたしました。

このプロジェクトに賛同した「<大震災>出版対策本部」(日本書籍出版協会、日本雑誌協会、日本出版クラブで構成)、角川グループホールディングス、セバ企画、読書感想文全国コンクール課題図書出版社一同、本庄国際奨学財団、矢野恒太記念会から多数の新本を寄贈していただき、当日こだま大会の参加者が持ち寄った図書も含めて、約4万冊を寄贈することができました。また、図書の寄贈と同時に多額の寄付金も集まりました。

当日は、関東地区SLAや全国SLAホームページを通じて募集した学校図書館担当経験者のボランティア約50名、全国SLAスタッフ、こだまJCスタッフによって、各学校の校種/規模/被災状況/寄贈を希望する図書の種類を考慮しながら寄贈図書を選んで、寄贈学校別に梱包しました。朝8時半から20時過ぎまでかけて、132校分すべての作業を終えることができました。

図書の寄贈は、まず第1段階として福島県いわき市に行いました。プロジェクトの翌10日(日)に、いわき市立小名浜第一小学校にいわき市内の寄贈先16校分の図書をトラックにて輸送し、11日(月)、小名浜第一小学校の全校児童・教職員・保護者、こだまJC理事長等が参加して贈呈式が行われました。児童は、テープカット後に初めて並べられた本を目にし、大歓声が沸き起こりました。児童代表のあいさつには、感謝の気持ちと決意が込められ、胸が熱くなりました。

4万冊という膨大な数の図書を手作業で仕分ける中では、どうしても寄贈する数や内容に偏りが出てしまいました。寄贈図書が少なくなってしまった学校については、後日寄付金を用いて新本を購入し追加の寄贈を行う予定です。また、このプロジェクト終了後も全国SLAによる被災校調査は継続し図書の寄贈を希望する学校にはできるかぎり寄贈を行います。まだ調査票をお送りいただいていない学校は、今からでもぜひ回答をお寄せください。調査票はこちらからダウンロードできます。寄贈時期や図書の種類の要望も、お書きいただければできるかぎりお答えしたいと思います。

35度を超える猛暑の中汗だくで作業していただいたボランティアの方々、図書や寄付金を寄贈していただいた個人及び出版社・関連団体の皆様、そしてこのプロジェクトのきっかけを作り、事前準備から当日作業までご尽力いただいたこだまJCに心よりお礼申し上げます。また、震災後の大変な時期に調査を行っていただいた各県SLAや各学校のご協力無しにはこのような大規模の寄贈は実現できませんでした。調査票からは、一般の報道からは浮かび上がってこない被災地の現実が伝わり、今後の支援を考える大きなヒントとなりました。また、寄贈を希望しない学校からは、「より被害の大きい学校に送ってあげてください」という温かい声や励ましを多数いただきました。心より感謝申し上げます。
被災地の学校図書館が復興するためにはまだ長い時間が必要です。全国SLA震災対応委員会は今後も息の長い支援活動を続けていきますので、皆様のご協力をよろしくお願いいたします。