文化審議会国語分科会報告案

「これからの時代に求められる国語力について」に対する意見

社団法人全国学校図書館協議会

 平成15年11月25日付けの文化審議会国語分科会報告案「これからの時代に求められる国語力について」(以下、報告案と略す。)に対する当会の意見を申し述べます。
 報告案において、学校図書館の図書整備、人の配置など計画的な整備を強調していただき、また、国や地方公共団体による積極的なデータ整備や情報公開、数値目標の設定など具体的な内容に踏み込んでご提言いただきましたことに対し感謝申しあげます。
 報告案に対する意見は以下のとおりです。

(1)教育課程に「読書の時間」を設定することを強調していただきたい。

 学校における読書活動は、「国語科」をはじめ各教科で全校を挙げて取り組むものとして明確に位置付けるという提言は評価する。しかし、問題のカギは子ど もたちが読書する時間の確保である。報告案が提案している各教科や総合的な時間における「読書の時間」による取り組みでは読書活動が細切れになりやすく、 十分な成果が得られない。また、課外活動の「朝の10分間読書」だけでなく、教育課程に読書する時間がきちんと保証されれば、心のオアシス、読書センター としての学校図書館の活用も期待できる。報告案では「読書の時間」の設定を「検討する必要がある」としているが、ここでは明確に教育課程に位置付けるよう 強調すべきである。

(2)司書教諭の専任化及び学校司書の配置促進を明記していただきたい。

 子どもたちの読書活動を活発にするには、魅力的で優秀な人材が必要であるとの指摘はそのとおりである。しかし、そのためにどういう人材が必要であるか。 報告案では「地域ボランティア」の力などを借りて図書館に常に人がいる体制を作ること、また、司書教諭が活動できる時間を作るなどの環境整備が必要であろ う、と指摘しているが、あまりに消極的な提案ではないか。まず学校内の人材をきちんと活用するよう促すべきである。
 第一に、「学校図書館の専門的職務」を掌る司書教諭の活用を促すべきである。そのためには、司書教諭が「自由に活動できる時間」を作ることが必要であ る。すなわち司書教諭の専任化など制度面の改善が必要であるが、同時に、地方公共団体において司書教諭の担当授業時間数の軽減など意欲的な取り組みも必要 である。第二に、「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」でも指摘されているように、司書教諭とともに学校図書館の運営や子どもの読書活動を支援 する学校図書館担当事務職員(学校司書)の配置を明記すべきである(本会が平成14年度に実施した「学校図書館調査」(悉皆)では、学校司書の数は小・ 中・高校合わせて約1万名である)。こうした図書館担当の職員をきちんと配置、活用しながら報告案にあるような外部人材の活用を促すべきである。

(3)学校図書館図書の充実を促すための抜本的な問題提起をしていただきたい。

 学校図書館の計画的な整備については、まず学校図書館図書標準を確実に達成することが当面最も重要な課題である。平成5年度にスタートした「学校図書館 図書整備新5か年計画」(総額約500億円)、その後の単年度の施策(平成10~13年度総額約400億円)を経て、平成14年度からの新たな「5か年計 画」(総額約650億円)においてこれまで総額約1200億円が図書整備費として措置されてきた。しかし10年経った現在も、学校図書館図書標準を達成で きていない。報告案が「地方公共団体の責任」と「国の指導・助言」を求め、学校や地域での取り組みを提示しているのは評価するが、国の施策を生かすための 抜本的な問題提起が必要である。
 なお、図書館の「蔵書構成」に保護者や子どもたちの意向を反映させるよう「選定方法」の検討を提案している。趣旨は理解できるが、子どもたちの利用を増 やすためにという観点を強調すると、軽い読み物やコミックなどの蔵書が増え、学習・情報センターとしての学校図書館の機能が低下し、「調べ学習」に役立た ない図書館になってしまう。図書の整備を図る上で重要なことは常に蔵書の更新を図ること、すなわち古くて利用されない図書を廃棄し、新鮮で魅力的な図書を 収集、提供することである。また、報告案には保護者の読書に対する意識改革のために有害図書等に取り組んでいる団体などの協力が必要とあるが、学校図書館 の「図書の整備」との関連がよく分からない。

(4)学校図書館活用を学校経営の重点項目に掲げるよう促していただきたい。

 学校図書館を真に学校教育に役立たせるためには、学校図書館担当者や個々の教員の力量や活動だけに委ねることでは不十分である。学校図書館の活用を学校 教育目標や学校運営組織に位置付けて教育課程を展開する、すなわち学校経営に学校図書館をきちんと位置付けることが必要である。例えば、校長の強いリー ダーシップのもと、図書館活用教育を学校経営の中心に位置付け、司書教諭(副教務主任)、学校司書、図書主任など校内の協力体制を作り、保護者・地域との 連携を図りながら図書館機能を生かした取り組みで成果を挙げている事例がある(山形県鶴岡市立朝暘第一小学校の図書館活用教育)。こうした取り組みを評価 し、学校経営に学校図書館の活用を重点項目として掲げるよう促していただきたい。

(5)中・高校生の読書推進を図る具体的な提案をしていただきたい。

 子どもの読書で深刻な問題は、中学・高校生の読書離れである。報告案ではこの問題に対してきめ細かな分析や効果的な打開策が提示されていないように思わ れる。小学生から中学生になったとたん、読書量が激減する実態をどのようにとらえるか。また、高等学校の学校図書館整備など高校生の読書環境整備について も問題提起が必要ではないか。
 中学・高校生の読書離れは子どもたち自身の問題というよりは、子どもと「本との出会い」がないからだと指摘する学校現場の声もある。子どもたちが意欲を 持って読書に取り組むような本との出会いの場を作ることが必要である。報告案にある読書活動の取り組み以外にも、例えば、地域の中学生が集まって読書感想 文の発表やパネルディスカッションを行う「書評座談会」を40年間行っている事例(東京都杉並区)や高校生が地域の小学校、公民館、老人ホームなどを訪問 して読み聞かせ、紙芝居、ゲームなどを20年以上行っている「高校生による地域子ども読書会」の事例もある(岩手県立伊保内高等学校)。こうした読書によ る感動体験をとおして中学・高校生の読書への意欲を喚起することも大切である。
 なお、報告案では、読書感想文の指導で読書を強制するような指導に疑問を投げかけている。しかし、読書感想文の指導は、本来、子どもたちがただ単に読書 を楽しむだけでなく、「読んで、考えて、書く」あるいは「読んで、書いて、考える」という過程をとおして子どもたちの読書力、表現力、思考力をきたえる教 育活動の一環として行うものである。こうした取り組みをただ「読書を楽しむことができない」からと一面的・否定的に捉える考え方には賛成できない。

(6)その他

 報告案の「関係団体との連携・協力を進める」の中に、「高校生向けの本の出版が1年間に150点ほどという現実があり」とあるが、この数字は少ないので はないか。本会は学校図書館の蔵書構成に役立てるため毎月2回新刊図書を対象とした図書選定を行っているが、平成14年度1年間の高校生向け選定図書は、 約2,400点である。

以上

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